雑筆短編集

神田川の架け橋で

　「終わりが訪ねたんだよ！」
　男性は対面の女性の目をじっと見つめていた。
　「理由は言えない。許してくれ！」
　男性は目を女性から外し、再び舞い落ちる桜に移す。
　「じゃあ、もうこれで。」
　男性は最後に女性の顔を見て立ち去った。
　飾り立てた桜は優雅に舞い落ちるのに満足せず、風によって男性の立ち去る姿を遮ろうとする。それに対して、女性は笑顔を引き換えて顔を隠さずにぽたりと結晶が迸(ほとばし)っていく。もちろん、声が大きい。
　ここは、女性にとって思いを馳せる場所だ。なぜなら、ここで二人が知り合い、記念としての場所だったから。全てはあの時から始まった。女性にはすれ違って男性に呼び止められたシーンが浮かぶだろう。
　泣き疲れたせいか、女性は涙を拭き続けたが、涙痕がまだ顔に残っている。その他、化粧が涙のせいでぼろぼろとなった。
　その別れの理由は一体何だ。なぜ今まで喧嘩もせず、仲良くやってきた結ばれた恋の糸がここで解けたか。女性には到底思いつかない。
　・・・

　（三ヶ月後）
　朝の仕事が終わって、女性のスマホにあるLINEが届いた。女性はメッセージの音が聞こえて、スマホを出してみた。元彼のお母さんだった。届いたメッセージには「ごめんね。直接に会って渡したいものがあるんですが。」と書いてあった。