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女性は足を止めて道のフェンスに凭れて「彼とはもう別れましたので・・・ものなどは・・・」と返事をした。送信済みになったと同時に、既読がついていた。数秒後、「実は、あの子に頼まれたんです。そのものを渡さないとと。」というメッセージが画面に飛んできた。
女性はしばらくはそのメッセージに注目し続けた。
「大丈夫です。もう要りません。」と打っていたが、送信のボタンを押そうとすると、指を止めて、文字を消していた。
改めて「はい。いつお時間よろしいですか。」と送信した。
すると、「できれば、今日で。」が飛んできて、女性は「はい。では、午後3時、駅前のカフェで、お待ちします。」を打って送信した。
女性はカフェの名前をお母さんに送って、先にカフェに入った。ホットコーヒーを頼んで、暇つぶしとして三ヶ月が経っていたとしても消せなかった二人の写真を見ていた。男性の笑顔がある写真が現れるたびに、女性の顔にも微笑みがついてくる。
時間は午後3時となる直前、夢中になっている女性は向こうに座り始めたお母さんに気づかなかった。ソファーに座る音を立てたことで、ようやく頭を上げて見かけた。
「どうもすいません。わざわざ呼び出して。」
お母さんは両手を膝に敷いて一度頭を下げた。
「いいえいいえ。ものとは一体?」
「それは・・・」
お母さんはカバンを開けて、アクセサリーが入っているような小さな箱を出してテーブルに置いた。
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