神田川の架け橋で

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 「これです。」  お母さんは左手でその箱を女性の目の前に推した。  「これは?」  「開けてみ。」  女性はその小さな箱を手に取り、開けてみた。その瞬間、女性は顔を上げ、目を大きくしてお母さんを見つめていた。  箱の中には、指輪。潔白でキラキラした指輪の上に、小さなダイヤモンドが嵌っていて、日差しでやけに輝いているように見える。  「なぜ、彼は来なかったですか?こんなものをお母さんに頼むなんて・・・」  「それは・・・」  お母さんはため息をした。  「あの子はもう、いないんです。それに、頼まれたと言ったのは嘘でした。ただ・・・あの子は最期まで手に握っていたのはそれでした。開けてみたら、指輪でした。それは多分、あなたに届けたかったでしょ。それで・・・騙してごめんなさい。」  女性は話を聞いたら、顔が凝った。  「それって、彼はもう・・・えっ!どうして・・・」  女性は涙が溜まりに溜まってきた。  「あの子は、ガンで亡くなったんです。三ヶ月前に急に「旅行に行かない」と私たちに言っていました。それで体調がどんどん崩れてきて、もう黙っていられなかったからか、全てを言ってくれたんです。」  お母さんはゆっくりと話した。それが感情に左右されているのか、それとも女性にわかりやすく説明してあげているのか、わからないのだ。
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