神田川の架け橋で

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 何度も中身をひっくり返してやっと見つけた。女性はそれを取り出して、川に投げ出そうとするが、手は本能的のようにその箱が握り締めてある。数秒後、女性は無力感を感じたようで、体は徐々としゃがんでいくが、曲がった指がフェンスに諦めずにしっかりと縋っていて、顔を歪めながら泣き始めた。  握り締めたその箱を開けて指輪を取った。  そして右手で左手の薬指にその指輪をつけた。  だが、変わらないのは、今でもその泣きが止まりそうになく、声も大きい。  日が暮れていったとしても、女性はその場にいた。指に嵌っている指輪は月光で、それなりの輝きが跳ね返ってくる。  <終わり>
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