石を追いかける

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 「輝く石なんてないよ!そりゃ絶対宝石だぞ!売れるもんだぜ!」  とふざけずに隣の人に説明した人がいれば、前に進むのをやめてひたすら佇んでそこへ目線を投げ続ける人もいた。  もともと詰まっている大通りの行列はさらに、徐々にあの建物へ移っていく。私まで推されてそっちへ歩かされる。中には後ろから無理矢理に前へ進もうとする人もいた。  眺めて見ると、あの建物の正体はようやくわかった。抹茶の売り場だった。今頃はその抹茶の売り場にいる従業員でさえわけがわからないだろう。なぜ店の前にこんなに人が集まってくるか。  単純に前の人に「お抹茶いかがですか」と聞いても、返事が得られない。その時、「すいません、通ります」とはしごをかけながら制服を着る作業員っぽい人がやってきたが、途中に誰かに呼び止められて、会話をしていた。その後、作業員がはしごを開き、屋根にかけた。作業員が一旦登ろうとするとき、下へ引っ張られて人々は次々と登っていく。  登っている間についに争いが生じた。下の人は上の人を引っ張って落としたり、上の人は下の人を蹴り飛ばしたりして、うまく進まない。
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