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そこにいるおばあちゃんは「いらっしゃいませ」と口で繰り返すが、誰も見てくれやしなかった。突っ込めた人はひたすら見回って石を探し出そうとする。
「あった!」
と奥にいる人が叫び出した。一瞬にして奥に人が寄り集まる。しかし、石はまた飛んだ。今度はおばあちゃんの手のひらに止まった。おばあちゃんは手のひらに止まっている石を凝視し、目玉を動かそうともしない。また人々が寄ってくる。
「おばあさん、それは僕のです。どうか返してください。」
と後ろからおばあちゃんに近寄る人が出てきた。
「うそつけ!おまえのもんじゃねえぞ!」
「そうなんですよ!なんてふざけた言葉!」
と次々に指摘する人の声も聞こえる。しかし、おばあちゃんはどうやら信じている。手であの人を前に招いて、石を渡そうとする。あの人は喉仏を動かし、唾を呑み込んだに違いない。そして右手を出した。
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