石を追いかける

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 「いったー!」  石が渡された途端、あの人は右手を引き寄せて、じっと見ながら、右手を左手で抑えている。石は一度床に落ちていたが、再び飛んでおばあちゃんの手のひらに戻る。  「ほら、ざまあみろ!」  「そいつばっかじゃないの?」  などの皮肉な発話が聞こえるのもわずか数秒後だった。  「実はそれはあたしのものなんです。」  一番前の女性も出て、右手を出した。この女性は賢い。手袋をつけている。おばあちゃんは相変わらず、渡そうとする。  「また被害者が出るぜ!」  皮肉する人も怠らない。  だが、言われた通りだった。叫びとともに、右手が引き寄せられ、さらに手袋には穴が開いてしまった。
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