夢現つ

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夢現つ

 ここは大学のコンピューター室。僕は一番最後の列に座ってキーボードを叩きながら、発想を尽くして今学期の論文を終わらせるつもりだが、左前の二人の男性の大笑いに惹かれて目を移させられた。  極めてスプレーを使ったせいか、ぽたりと水気が落ちそうなオールバックの人の側面。それと、ストレートヘアで、前髪を垂らして片目を遮っている側面も見える。  「お静かに!」  と右前の女性がヘットフォンを耳から下ろして首にかけ、あの二人へ叱るように声を届ける。これもまた側面しか見えなかったが、メガネをかけたセミロングの女性だ。  セミロングの女性は話し終えた後、再びヘットフォンをかけて目の前を注目し始めるが、二人の男性からの見下す目線は気づいていなかったようだ。二人の男性は女性に言われたとはいえども、全く大笑いと雑談を終えようとせず、逆にどんどんひどくなっていく一方で、笑い声がここで響き続く。  ここはコンピューター室だが、あの二人の“おかげで”、(やかま)しい居酒屋となる。けれども、この居酒屋は本物のとはまた違って、二人だけで(にぎ)やかに演じられている。“(けい)(ふく)”するものだ。  止むを得ず、セミロングの女性の一個前の席に座る、角刈りの男性が立ち上がり、どうやら耐えられなかったようだ。  「おめえら、うーせんだよ!いい加減にしろ!ここコンピュター室だぞ!カス!」  角刈りの男性は体を左へ捻り回し、手元のヘットフォンの柄を握りしめているように見えた。相当な声で、これは紛れもなく、怒り出している。
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