2人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
「おえおえ。今、おめえの方がうーせんだよ!」
ストレートヘアの男性は声の源をたどって、顔を後ろに向けて嘲笑いしながら言葉を吐き出すように言う。
「んだと!てめえやんのか?あ?」
角刈りの男性は袖を上に巻きながら足を速めて二人へ歩いていく。とうとうとストレートヘアの男性の前に着いた。見上げるストレートヘアの男性と見下ろす角刈りの男性。ここから見れば、もう張り合ってヤル気に違いない。
しばらくはそうなっていたが、ストレートヘアの前の女性が椅子を回して、二人を見ていた。張り合っている二人の隔たりから見れば、その女性は可愛らしい顔で、目が大きく、上半身だけ見ても、それはワンピースを着ているのがわかる。顎までのショートカット。
「やめな。二人とも。」
ショートカットの女性は手を上げ、二人の胸前に押さえる。しかし、触れたのではない。二人は互いにじっと見張っていて止める様子がなく、女性の話をも無視した。
「なにするつもり?」
ストレートヘアの男性は見上げながら、無表情の顔を立て続ける。
「だから、うるせえっつってんの!」
角刈りの男性も見下ろしながら、無表情の顔を立て続ける。
「こ、こ、で!静かにしろ!」
と頷きながら右手の指で床を何度も指して、顔をストレートヘアの男性から撤回し、元の座席に戻っていく。その間、ストレートヘアの男性は目線を角刈りの男性から離さなかった。
最初のコメントを投稿しよう!