患う親父

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患う親父

 酔っ払ってぼんやりと帰りの道に誰かの電話がかかってきた。  最近休職し始めた親父からだった。たわいもない話だった。それにしても、行方不明の妹に心配などが持たない休職以来の親父は変わった気がする。おふくろとは全く違って、妹のことはどうでもいい態度をとっておかしすぎる。  休職したのは、変な病気になったと言い聞かせていた。最初は家族として心配して、おふくろも病院に行って診てもらった方がいいと何度も勧めたけれども、親父は病院が怖いと言い訳をしていた。その後、おふくろに無理やりに連れて行かれて病院の先生に診てもらったが、(けっ)(とう)()が上がっていただけだと言われた。  その診断結果に不満を抱える親父は会社に休職を求めて家に引きこもるようになった。  それに行方不明の妹のことに対しては、家にはそんな子がいない、おまえ一人っ子なのだと言い聞かせまくっていた。その話を聞いたおふくろはただ冗談はやめなと優しく言うが、頑固な親父はどうしても自分の主張を通す。  そういう話ばかりを言っていたせいで、おふくろにもう一度病院に連れて行かれた。神経科の先生に診てもらったけれども、結果は正常。
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