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最後の手紙
何かの記事だったか投稿だったかに「年賀欠礼」のハガキの代わりに本人からの「引っ越しのお知らせ」が届いたという内容のものがあった。それを読んだ時に面白いと思ったのだった。
そう思ってから5年以上経ち、重い腰を上げて「引っ越しのお知らせ」を書くことにした。いつも手紙を書くときに使っている0.4の黒ボールペンとハガキを食卓テーブルの上に置く。
その時は早ければ今日やってくるかもしれない。わかってても、まだ大丈夫だろうの方が勝つ年齢に、なかなか取りかかれずにいたのだ。
いざ、書こうと思ったら引っ越し先がわからない。キリスト教なら天国、神道なら差し詰め神の国だろうか。先の話の中では「極楽浄土○丁目○番」とか書いてあったように思うが果たして死後、私はどこへ行くのだろうか。
身体がなくなれば、そこに付随したものもまた、なくなるだろうと思われる。無になりたいと思う。一文字も書けないままハガキを前に考えを巡らせることになってしまった。
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