最後の手紙

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 ずいぶん昔のことになるが、今で言うところのイケメン俳優が「おやじ、涅槃で待つ」と義父宛に遺書を残し自死した。腐女子(その頃はそんな呼び名ではなかった)だった私はテレビで泣き崩れる義父の顔を見て、なんとも残念な気持ちになったものである。てっきり二人がそういう関係だと思い込んでいたが、そうではないという話も。それはそれで複雑な気持ちだったのを覚えている。  この「涅槃」は普通の人が行ける場所ではないようだから、このイケメン俳優が「涅槃」に留まることなど、いやまずそこで待つことなどできなさそうである。とすれば、あの二人はどこで落ち合ったのだろう。  脱線してしまった。  仏教にも宗派がいろいろあるから解釈も違うかもしれないが、お釈迦様が残したとされる教えに死後の世界は存在しないという。濁してあるらしい。家は浄土真宗本願寺派である。お経や埋葬については多分それに従うのだろう。お坊さんから葬式は亡くなった人のためでなく残された人のためのものと、昔聞いたように思う。  ますます「引っ越しのお知らせ」が書きづらくなる。
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