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宵闇の殺人鬼
夜の帳が下り世界が闇に満ちた時、陰に潜み生きる者達が動き出す。
暗い路地裏、寂れた公園、苔むした廃校、使われない倉庫────至るところに陰の者達は潜んでいる。
もしかすると、今、すぐそばにも……。
今宵も一人、陰の者達の犠牲になった者がいる。
「ひぃぃぃっ!!どどどうかっ、お助けをっっ!」
会社帰りの草臥れたサラリーマンが、薄暗く奥まった路地裏の地を這う。
「あははっ!!いいよー?」
それを悠然と見下ろすのは、狂気染みた笑いを上げる一人の青年。
「…僕から逃げ切れたらね」
「っっぎゃぁっああ、足…あしがあぁぁ!!」
しかし、サラリーマンが立ち上がることは二度と叶わなかった。何せ、本来あるべき場所にあるはずの足はとうに青年の手の中にあるのだから。
「っうるさ……ねぇ…汚い声、上げないでよ」
「ぁ…あ、足が…っ」
青年の声に最早答えることもなく顔をぐちゃぐちゃにし、ただ芋虫のように蠢くサラリーマンを軽蔑するように見下ろし、青年は息を吐いた。ついで、手にしていた足を放る。それはビシャリと汚い音を立て、黒い水溜まりへと沈んだ。
「足なんてどうでもいいじゃない。どうせ、今からその心臓さえ使えなくなるんだから」
「っひ!……ぁ…あ…っがっ!!」
漸く青年に焦点を戻したサラリーマンだが、時既に遅し。サラリーマンの心臓は既に鼓動を止め、使い物にならなくなっていた。
「…汚物が」
そして、青年はサラリーマンだったものに一瞥をくれ、闇に背を向けたのだった。
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