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ぼんやりと取り留めのない考えから意識が戻り、目線を何気なくあげた。
ひゃっ!幹ちゃんとがっつり目があってしまった。
ん、んー、めっちゃ目があってる!!
な、何か話しかけた方がいいかな?僕としてはただ見とくだけで十分だけど……
「幹ちゃん目腫れてる?」
自分の言葉にびっくりする。
は?何言ってんの?馬鹿なの?さっきそれについて気まずいから席一個ずらしたんじゃないの?冷や汗が出る。
「あ、ああごめん、ごめんね余計な事言った」
慌てる僕をみて幹ちゃんが小声で
「やっぱりまだわかります?朝はもうちょっと、ひどかったから伊達メガネと前髪でごまかしてたんですけど、もういいかなってさっきメガネとったんです」
「い、いやちょっとだけ、だ、ょ…」
幹ちゃんの顔が近くて、見つめられて、どんどん俯いていって語尾が小さくなる。おまけに耳まで赤くなっていくのが分かった。
ダメだ、悟られる!それだけはダメだ。
顔を伏せたままあげられない。あげない!
不自然だろうが何だろうが決定的な顔を見せるわけにはいかない。
あの人そうかな?と思われるのと、あの人そうなんだと思われるのは、今後の人間関係に於いて、やりにくさが雲泥の差な事を今までの経験上嫌という程知っている。
その時、マスターが幹ちゃんに出来たよと声をかけた。ああマスターありがとう!
幹ちゃんがマスターの方を向くのがわかった。
ひゃあ、助かった。
コーヒーがやってきた。勿論ふわふわ浮いてきたわけではなく、幹ちゃんがどうぞと持って来てくれたんだけど。
漂う香りを吸い込むと、さっきまでのドタバタした気持ちが一気に落ち着いた。
ゆっくりと味わうと温度とはまた違う何かで胸が暖かくなる。
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