マンデリン

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「僕昨日失恋したんです。昨日泣いちゃって」  図々しさの本領を発揮し失言を無かった事にして、コーヒーを味わい、ゆったりとした時間を楽しんでいたら、いきなり幹ちゃんが目が赤い理由を述べてきた。 取り合えずコーヒーを口に含んでいなくてよかった。 噴き出すことはしなくてもむせはしていたはず。 「そうなんだ・・・・・・それで目赤かったんだね」 「はい」 幹ちゃんは困ったような八の字眉毛で笑っている。多分昨日の今日で心はすかすかのずたずただろうに。。。  少しだけ踏み込んでいいかな?と思って 「お付き合いしてたの長かった?」 と聞いてみた 「まあそこそこです」 そうなのか~辛いなあ。 「そうか、辛いね…大丈夫?」 考えた事と大差ない言葉が漏れる。 「はい、前から決めてたことですし」 笑顔が痛々しい。 決めていたという事は幹ちゃんから切り出したんだな。 「無理しないでね」 そして会話は途切れた。 途切れた。 途切れたんだってばよ。 他になんて言えばいいの? じゃ、僕とお付き合いしようかとか言っていいの?いいわけないよね。 うん、わかってる。  頭の中の騒がしさとは違って幹ちゃんと僕の間には漫画で描けばし~んと頭上に描かれるんじゃないかと思うくらい静かだ。 さっき逃れたはずの気まずさが、俺はまだここにいるぜとにじり寄ってくる。 その静けさをやぶったのは幹ちゃん。 「今お付き合いしてる人はいますか?」 「え?え?今?」 幹ちゃんそれはお付き合いしましょうという話のプロローグ? なわけないよね、分かってますって。 「今はいないよ」 幹ちゃんにそう伝えながらそっと胸の内で彼を思い出す。
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