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祖父の喫茶店を手伝うならばと、大学に通う間の長い休みを利用して一応バリスタのライセンスも頑張って取ったけれど、祖父の淹れるコーヒーの足元にも及ばない。日々研鑽だ。
祖父の淹れるコーヒーは馥郁として優しく人を包むような香りがある。それはまるで祖父そのもののようだ。
勿論それぞれの豆の種類、焙煎、挽き方で変わる特徴はそれぞれ十分に際立っているけれど、この喫茶店に流れる香りは全体としてそんな印象だ。
常連さんは祖父に「目を覚まして~」だの「気持ちが落ち着くやつ~」だのリクエストしていて祖父はそれを笑顔で聞き入れ即座に焙煎度合を見繕い、挽き方を変えている。
ここに来た人は一様にホッとした顔になる。
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