ベトナム南部産コーヒー

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 カラオケボックスでの別れ話は最初、淳也(じゅんや)に冗談だと思われたようだ。   淳也は二歳年上で地域の大学間の懇親会で知り合った。好きな映画や歌のジャンルが恐ろしい程似ていた。優しくて頼りがいがあっていつまでも話していられた。  初めて浮気が分かった時は大喧嘩になった。以来僕は何度も浮気は止めてと言ってきた。淳はあれは浮気とは違うとちっとも悪びれない。 本当にそれ以外は完璧な彼氏なのに。一番大事なところが分かり合えないまま今日になった。 「またまた、(かん)ちゃん~、誰が見たんか言うてん」 「それは言わんよ、でもその日どこにおったんか言える?」  こんな質問、どうとでも言い逃れできるだろうに淳也(じゅんや)は思わず言葉に詰まった挙句、肯定するような言葉を口にした。 「だとしてもよ、それは体だけの関係じゃろ?」  分かっていたのに、本人の口から聞けば、やっぱりズキリと胸が痛む。 「だから、それが嫌なんじゃって何回も言うたやろ?」 「淳は僕がそんなことしても平気なん?なんとも思わん?」 「そりゃ、嫌やけど仕方ないかなって」 「・・・・・・それ、それが答えと思うよ、大事な人は他の人に触られるの嫌だと思うのに体の構造のせいにして快楽が優先なんじゃん、それが嫌なん」 「それの何が悪いん??」 馬鹿にされたと思ったのか淳也の目に怒りが灯る。 「悪うないよ、ただ僕は好きな人が他の人とそんな事するの我慢出来んの、だからこれ以上一緒におっても、お互いええことにはならんじゃろ?」 「じゃけ、ここで一旦さよならじゃ」  僕が立ち上がり握手を求めると、これまでの痴話喧嘩とは違って本気の別れ話だとやっとわかってくれたようだ。    
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