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次にせっちゃんが現れた時、僕は会ったことも見たことも無い相手に対して怒りに震えた。
せっちゃんの顔に紫色のあざがあった。夏だというのに首元まできっちりとボタンをとめた長袖のシャツと長いスカートをはいていた。体中に夏の装いでは隠せない程の跡があるのはすぐにわかった。
せっちゃんは泣きながら、
「ごめ、ごめんね、じっ、実家に帰る前に、すこし、少し、落ち着かせて」
震える唇に折り曲げた細い指をあてながら呟いた。
1年生になっていたみっちゃんは僕を覚えていてくれたし、肩から苺のポシェットをかけていてくれた。大事にしてくれていた事が一目でわかった。それを見ただけで愛しさが溢れる。
なんとそのみっちゃんの足や腕にもあざがあった・・・
父に言われてすぐに休憩室の方に2人を案内した。
「ごめんね・・・・・・」
せっちゃんが呆けたように座り込んだ。僕はみっちゃんに、足や手痛くない?と聞きながら座らせた。
父がすぐにクリームソーダを持って来てくれたのでみっちゃんに差し出した。もじもじしていたので
「みっちゃん、どうぞ」と勧めるとみっちゃんがせっちゃんを見た。
せっちゃんが頂きなさいと言うと嬉しそうに少しだけ口をつけ、
「お母さんも」とクリームソーダをせっちゃんにも飲めと差し出す。
その姿を見てせっちゃんがハンカチで目を押さえた。
「お母さんはいいから」
「そうだよ、みっちゃん、お母さんにはコーヒーがくるからね」
僕が言うと安心したように飲み始めた。
「ごめんね、みっちゃん、もっと早くこうしてれば良かったね」
せっちゃんがまたハンカチで目を押さえた。
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