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僕は本当に喫茶店の中だけでぬくぬくと生きていたのを、この後知ることになった。
みっちゃんの学校の付近の金物店に用事があって出かける事があった。ちょうど下校時間にも重なるからみっちゃんがいたら一緒に帰ろうと自転車を押していると、後ろから囃立てる声が聞こえてきた。
「美津子んちの父さんお前が嫌いで捨てたんだろー」
「お前の母ちゃんが浮気して出来た子だってー」
「汚ねー」「あっちいけー」
みっちゃんは取り合わず真っ直ぐ前を向いて歩いていた。男の子達はそんな自分達を無視した態度が気に食わないのだろう、今度はみっちゃんのランドセルを引っ張った。
「危ない!」
自転車を放り出して駆け寄ったが間に合うはずもなく、みっちゃんはお尻から倒れていた。抱き起こしている間に男の子達は逃げて行った。
みっちゃんは手をぎゅっと握り唇を噛んでいた。幸い怪我はしていなかった。
近くの公園で話を聞くと、4年生になってから始まったという。
誰にも言えなかったらしい。
子供があんな事言えるはずはない、あの男の子達の親が話しているのだと察しがつく。
「お母さんに言おう」
僕が言うとみっちゃんは激しく首を横に振る。
「どうして?」
「お母さん、かわいそう…」
自分がこんな目にあっているのに母親を庇おうとするみっちゃんが可愛そうで堪らない。
「でも、これは放っては置けない、嘘は言い続けられると本当だと思う人が出てくる、それからじゃお母さんもみっちゃんももっと傷ついてしまうよ」
「でも、誰も守ってくれない!」
珍しくみっちゃんの感情が爆発して大きな声で叫んだ。
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