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「祖父、僕また恋が出来るかな?」
泣きはらした目で夕日に染まった店内を見渡しながら聞くと
「幹ちゃんがそうしたいと思えばそうなるよ、きっと」
泣いてる間中何も言わず背中をなでてくれていた祖父が断言してくれる。
「そしたらその時はまた僕にピッタリなコーヒー淹れてくれる?」
側に座る祖父に聞くと、
「もちろん」
まるで執事のように胸にそっと手を置いて頷いて見せる。
「そん時は幹ちゃんと新しい彼氏に淹れてあげるからね、今度は連れて来んさい」
祖父がふふっと笑う。
「絶対別れんって思える人が出来たら連れてくるよ、いつになるか分らんけどね」
僕がにやっと笑うと
「楽しみに待っとるよ」
祖父が、新しいコーヒーを淹れようねと立ち上がった。
じゃけ、長生きしてよ祖父の背中に胸の内で呟く。
僕の恋は今日終わった。
甘い香りとビターチョコレイトの苦みを残して。
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