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俺は教室に滑り込むのも忘れていた。
俺は脅迫状の文面を何度も読み返していた。
脅迫状に記されている三人の女子生徒はいずれも俺と同じクラスだ。しかも美しい外見と清楚で気取らぬ性格で、男女を問わず人気がある高嶺の花の美少女トリオだ。その三人の美少女達の採取済みの検尿を不正に横流しせよということらしい。なるほど。二年五組保健委員としてクラスメート全員分の採取済み検尿を保健室まで運ぶ大役を任されている俺ならではの脅迫被害ではないか。
それにしてもだ。この脅迫状を書いた自称地獄元帥とやら。馬鹿なのか賢いのか、よく分からない。確かに脅迫状を読めば犯人は一目瞭然。悪の秘密結社大幹部――地獄元帥の正体は明堂アキラしか有り得ない。
だが、こうも思う。単純すぎる。果たして本当に地獄元帥の正体は明堂アキラなのだろうか。どうにも脅迫状の内容と明堂アキラの雰囲気が結び付かない。明堂アキラは校内でも指折りの秀才だ。こんな馬鹿げた脅迫状を書くような人物とも思えない。
さては、地獄元帥。明堂アキラに何らかの恨みを持つ人物なのか。明堂アキラに脅迫者としての罪を擦り付けようとでも思ったか。やはり、犯人は馬鹿だ。俺を脅した度胸は誉めてやってもいいが、考えが甘すぎる。俺がそんな罠にかかるとでも思ったか。
地獄元帥――馬鹿なやつめ。
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