4人が本棚に入れています
本棚に追加
親愛なるカーティス様
まず、お詫びを申し上げないといけません。今回の依頼は、真の依頼をあなたに託すことが出来るかどうかを試すための試験でございました。この隠し場所は、そもそも私が以前から承知していたものでございます。
この探索において、あなたが真の依頼を託すに値する、知性、行動力、信頼性をお持ちの方であると確認させていただきました。ぜひ依頼を引き受けていただきたいと思います。詳しいお話は私どものロンドンの屋敷でさせていただきます。早急に屋敷までおいでください。依頼の内容についてここで明かすことはできませんが、我が国の存続にかかるものであるとだけお伝えしておきます。
ヴィクトリア拝
なんてことだ。依頼そのものが仕組まれたものだったとは。だが……。
ふと目を上げて、メアリがこちらを見つめていることに気付く。その視線は手紙にではなく、私の顔に向けられていた。先ほどまでと違い、取りすました、感情を窺わせない表情をしている。だがよく見ると、彼女の口の端がほんのわずか上がっていた。そうか、そういうことだったのか……。
「どうぞ」
彼女に手紙を渡す。彼女は手紙を受け取ると、無言で文面に目を走らせた。その表情はすまし顔のままだ。
「ドレイク一味の妨害を含め、どこまでが仕掛けだったのかなんて、無粋な質問はしません。ただ、一つ思いついたことがあります。こんな手の込んだ仕掛けをする令嬢ならば、試験のクライマックスの部分は自分の目で確かめようとするのでないかとね。それも一番近くの特等席で」
話しながら見つめると、彼女の表情がゆっくりと微笑みに変わった。
「何をおっしゃっているのかわかりませんわ。でも、ロンドンの屋敷にいらっしゃるのですよね。それならば、ご一緒させていただきますわ」
「ええ、お願いします」
こうして、次の謎を解くための旅が始まった。
終わり
最初のコメントを投稿しよう!