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茂みの中をはいつくばって探し、十分ほどで鍵を見つけることが出来た。メアリの下に駆け戻り、錠を外して爆弾を取り外す。内側にあったスイッチで、時限装置も停止することができた。穴を掘って、爆弾をその中に収めた後、恐怖と緊張から解放されて泣きじゃくるメアリに抱きつかれ、たっぷり五分間は次の行動ができなかった。
ようやく行動ができるようになった私は、メアリと共に丘の上から館の様子を窺った。
「ごめんなさい、私のために密書を奪われることになって」
「いや、たぶん大丈夫だ。ほら、ご覧なさい」
眼下の館を指さす。ちょうどドレイク一味が館の前に姿を現したところだった。
一味は敷地に侵入し、書斎の間の外壁の周りにたどり着いた。ドレイクが右側の鎧戸に近づき、腕を振り上げて鎧戸を殴りつける。発現する変化を捉えようと、一味は鎧戸や壁をきょろきょろと見回していた。だが、三十秒が経ち、一分が過ぎても何の変化も現れなかった。ドレイクは二度三度と鎧戸を殴りつけたが、結果は同じだった。
次にドレイクは左の鎧戸に近づき、そちらを殴り始めた。だが、やはり何の変化も現れない。しまいには一味は二手に分かれて、全員で鎧戸を叩き始めた。
そうしているうちに館の内部で動きが起こった。あちこちの窓から人が顔を出し、一味の様子を不審そうに眺める。やがて玄関の間の扉が開き、警備員の一団が出て来た。警棒を振り上げ、書斎の間の方に向かう。
警備員の接近に気付いたドレイクは、一味に鎧戸を叩くのをやめさせた。もう一度、恨めし気に鎧戸を睨みつけた後、警備員の到着の寸前に一味とともに脱兎のごとく逃げ出した。警備員はその後を追う。一味が駆け込んだ茂みから、黒い車が飛び出した。
館から離れようとする車の前に、回転灯を光らせた警察車両が現れた。黒い車は急転回して逃げ出す。二台の車は追いかけあいをしながら、地平の彼方へ消えて行った。
「ほら、大丈夫だったろう」
「そのようですね。でも、どうして?」
メアリは首を傾げた。
「ドレイクに話した解読には嘘を混ぜていたのさ。密書はまだ館にある。これから、取りに行くんだ。手伝ってくれ」
彼女は目をしばたいた。
「私にできるのでしょうか?」
「大丈夫だよ」
彼女の分も含めて準備は整っていた。
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