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一時間後、警察の制服を着た私とメアリは、書斎の間の外、二つの鎧戸の前に立っていた。事件の証拠採取に来たと警備員に居丈高に通告したら、身分証の提示を求められることもなく、ここに入ることが出来たのだ。
私は右の鎧戸の前に立ち、メアリを左の鎧戸の前に立たせる。
「ドレイクへの説明では、ː/ ː /をいれて、シー ルーバー スラッグ になると言ったけど、切れ目の位置が違うんだ。二つ目の切れ目はsの後ろに入り、siː/lːvers /lug 、 see louvers lug になる。
louverが複数形になって、 slug 『強く打つ』 でなく、lug(ラグ) 『強く引く』だ。
文としては、『見ろ 複数の鎧戸 強く引く』になる。鎧戸を掴んで、合図をしたら思い切り手前に引いてくれ」
「はい」
「一、二、三、引けっ」
掴んだ鎧戸を手前に引く。確かな手ごたえと共に、壁の中からカチッと言う音が聞こえた。鎧戸を離して壁を見ると、煉瓦の一つが五センチほど手前に浮き出している。掴んで引っ張ると簡単に外れ、その奥が空洞になっていた。覗きこむと、その中に一つの封筒が格納されていた。指を差し込んで封筒を取り出す。
だが、何かおかしかった。ヴィクトリア女王の密書なら百年以上前のものなのに、その封筒は真新しい。とにかく中を調べる。入っていたのは折りたたまれた一枚の便箋だった。便箋を開くと……。
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