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タイガの日常
――PiPiPiPi…
すぐ近くで機械的なアラーム音が響く。その出どころを探るように手をもぞもぞと動かした俺は何とかベッドサイドに置かれたケータイを掴んだ。
「……ねむ」
くぁ、と欠伸と共に伸びをするとボリボリと赤い髪を掻く。
時刻を見れば午前5時。いつもと同じ時間だ。
「……おーし、やるかぁ」
寝起きがいいのですぐさま覚醒するとそのままベッドから降りて軽くストレッチをする。
それが終わると適当なジャージに着替え、家の周りをランニングするのが俺の日課だ。
休日ならば一時間程走るところだが、今日は学校があるので30分程で終える。
一時帰宅しシャワーを浴びればちょうど母親から朝食の声がかかった。
リビングに降りると母親は既に食事を始めていた。
「おはよう」
「はよーさん。アカリは?」
妹の姿がなく気になって母に尋ねる。いつもなら朝練があるからと同じ時間に起きているはずだがその姿がどこにも無い。
今日休み、ってことはないよなぁ。
「まだ寝てるわよー。今日は朝練ないんですって」
「そっか」
妹アカリは中学二年生という反抗期真っ只中なので顔を合わせれば文句が飛んでくる。どうにも兄の存在が気に入らないらしい。
うるさい妹だが、いないといないで少し味気ない。
そんな風に思いながら母の作った食事にありつく。今日は和食のようだ。山のように乗ったししゃもとだし巻き卵と大根の煮物。それからほうれん草のお浸しだった。
今日はいつもより品数が多いので多分母は休みなのだろう。週末以外にもたまにこうして休みが入るので息子の俺でも全ては把握していない。毎朝こうしておかずが増えた時に察するくらいだ。
すぐ目の前の味噌汁からはワカメの良い香りがする。
うん、うめぇ。
タイガが夢中になってそれに文字通り食いついていると先に食べ終えた母は思い出したように立ち上がった。
「タイガ、ユキオ君家行くならこれも渡してきてね」
タッパーに入ったそれは何かと覗き込めば、渡されたのは煮物だった。どうやら今食べているものと同じものらしい。
よく隣同士こうして食べ物のやりとりをするが大抵はタイガとユキオの間で行われている。
たまにユキオの姉であるハルコさんともやり取りするようだが、こちらの方が早いからと朝に関しては俺の担当だった。
「はいはーい。持ってくよー」
昨日の唐揚げのお礼かなと勝手にあたりをつけて適当に頷いた。
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