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声も上げる暇もなく吹き飛ばされた男は、アスファルトを勢いよく転げ回り、数メートル先の電柱に激突して止まった。男のそばには、運転手のいない大型のバイクが横たわっている。
「いやぁ~すみませ~ん。俺のバイクぶつけちまって。」
神経を逆撫でする声で話しながら男のもとへ近づいてきたのは、とある若者だった。灰色のパーカーに紺色のカーゴパンツ。某スポーツブランドのスニーカーを履いた若者は悪びれもせず、バイクのキーを指で回しながらヘラヘラ笑っている。若者は救急車を呼ぼうともせず、倒れた男に話しかけ続ける。
「本当マジですみませんね。でもアンタなら・・・・・」
若者はニヤついた笑みと歩みをピタリと止め、先ほどとは売って変わって真面目なトーンで言い放つ。
「死んでねェだろ?“改造者”様よぉ。」
その言葉に反応するかのように、男は立ち上がる。スーツについた埃を払い、首に右手を触れながらながら若者に問い掛ける。
「何故、俺が体を機械で弄りまくった犯罪者どもと思われなくちゃならない?」
「バイクに跳ねられてもピンピンしてんのが証拠だろ。」
「それもそうだな。なら・・・・・」
男は横にあったバイクのマフラーを掴み、片手で軽々と持ち上げる。
「ここで死んでくれ。」
若者に向けて、男はバイクを投げつけた。
「おいおい危ねぇなぁ!!」
若者は飛んでくるバイクを避けようともせず、なんと足場にして跳躍。上空から男に襲いかかる。
「チッ!」
とっさに腕を交差させ、攻撃を受ける男。が、その腕が一瞬にして切断される。思わぬ事態に驚愕するも、男は危険を感じ、すぐさま若者から数メートルもの距離を取る。
「へっ!足もイジってんのか。フツーは人間そんなに跳べねぇーぞ。」
軽口を言いながら余裕綽々とした態度をとる若者の手には、一振りの刀が握られていた。
「お前も大概だがな。」
男も軽口を返すが、明らかに振りな状況へ追い込まれていた。44口径マグナム弾をも耐える金属の腕がいとも簡単に切断され、そこに搭載されていた武装も封じられてしまった。男に打てる手はほぼ残されていなかった。
(まさか飛んできたバイクから得物を回収、そのまま斬りかかってくるとは・・・。仕方ない。今はヅラかるk、)
逃走を決意し、撹乱のためのスモークを出そうとした刹那、男の視界に星空が広がった。
「させるかよ。」
若者が納刀したのと同時に、男の首が地面に落ちる。残された体からは一滴も血は出ず、首の断面から導線のようなものが露になっていた。
「ま・・・さか、テメェ、は・・・、あの改造者狩り、の・・・、」
男の問いに、若者はうんざりしながら答える。
「俺は殺し屋じゃねぇー。俺は・・・」
彼の名は芳賀 誠一。体を機械に改造し、その驚異的な能力で犯罪を犯す、改造者を狩り続ける男。彼は裏社会でこう呼ばれている。
「“解体屋”だ。覚えとけスクラップ。」
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