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第二章:女子高生の話
小魚のかき揚げバーガーとオレンジジュースの載ったトレーを席まで運び、ストローをオレンジジュースに差した時、隣から甲高い笑い声が聞こえてきた。
ちらりと横目で見ると、二人の女子高生がけらけらと笑いながら話している。仲は良さそうだが、ずいぶんとタイプの違う二人だった。
一人は長いストレートの黒髪で、ぱっと見たところアクセサリーなどもつけておらず、優等生じみた雰囲気がある。
こんな時間にファーストフード店にいる時点で優等生ではないと考える者もいるかもしれないが、それはどんな理由でこの時間まで出歩いているかにもよるだろう。
教育に熱心な家の子であれば、小学生でさえも夜遅くまで塾に通ったりするものなのだ。そして子供というのは、駄目と言われても帰りがけに買い食いをしたりファーストフード店に入ったりする。小学生でなく高校生なら、なおさらだ。
もう一人は対照的に、髪を橙色に近い明るい茶色に染め、爪にも派手な色のネイルアートを施していて、いかにも夜遊びをしていますといった風情である。
ただ、小柄で華奢な体格と二つ結びという髪型のせいか、どうにも子供っぽく見える。派手好きな女子高生というより、無理に背伸びして派手好きな女子高生を装おうとしている中学生と言われた方がしっくりくるかもしれない。
実際、この二人が本当に女子高生であるかどうかなど、俺には判断のしようもない。本当は中学生なのかもしれないし、逆に制服コスプレをしている大学生や社会人かもしれないのだ。
まあ、後者の可能性はほとんど無いとは思うが。
「でもさー、最近、本当に物騒だよねー。ほら、ちょっと前も、海で人の死体が漁船の網に引っ掛かったらしいじゃん」
「えー、何それ? 知らなーい」
「あんたはさー、もうちょっと世の中のことに興味持ちなよー。ほら、一週間前くらいに見つかったってやつ。二十代くらいの女の人でさ、白いロングスカートで上も白い服着てたせいで、見つけた漁師さんが最初はでかいクラゲか何かだと思ったってあれ」
白いロングスカート……。
その言葉を聞いて、俺は嫌なことを思い出した。
別れた妻が、白い服を好んで着ていたのだ。確か、白のロングスカートも持っていたように思う。
離婚して以来、一度も会っていないし、会いたいとも思わない。そういう別れ方をしたのだ。子供がいなかったのがせめてもの幸いだった。
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