てるてるBOY

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まさか、あんな馬鹿なことしてる人がいるなんて思いもしなかった。 あれは私が高校受験を半年後に控えていた頃だった。 いつも通る駅前のケーキ屋さんの前にいた物体に気を取られ、私はなんとなく足を止めた。 どう見てもバランスの可笑しい巨大なてるてる坊主の着ぐるみが土砂降りの中、ビニール傘を配っていた。 いや、配ろうとしてした。 私も駅から出て急に降ってきた雨に、戸惑ってはいた。だが、みんな怪しい空気を感じているのだろう。それがあまりに異様な出で立ちのために、無視して通り過ぎていた。 すると、そのてるてる坊主は私の存在に気付いたのか、此方に振り向くとゆらーっと近寄ってきた。そして、傘を一本差し出してきた。 私の身体はすっかり髪から水滴が滴る程度には濡れてしまっていて、持っていた鞄の革も少し湿って重くなっていた。 そう、早く傘を差すべきなのは誰の目にも明らかだったのに、それを何故か受け取れずにいた。 てるてる坊主は再び、傘をずいっと私に差し出してきた。 はめていた手袋から見えた皮膚の肌色に人である安心感を覚えると同時に、「知らない人」であることに嫌悪感も抱いてしまった。 そのため、私は肩をグッとすくめ、右肩にかけられていた鞄をぎゅっと握りしめると、それの横を走り抜けた。 まだ、その頃は知らなかった。 この奇妙な出会いに 続きがあるなんてーーー
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