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私達の興奮をよそに、先輩は話終えると、階段近くの花壇に腰掛け、冷めた様子で淡々とデータの記入を始めた。
私は入部の意思を固めつつも、そんな彼の様子を伺っていた。
すると、左隣にいた萌音が躊躇うことなく先輩に近寄って担当直入に尋ねていた。
「あの、入部体験者は他にいらっしゃるんですか?」
「いないよ」
「じゃあ、今入部を希望すれば部員になれるってことですか?」
萌音が喜びから声を上ずらせると、先輩は急に鋭い眼差しで彼女の顔を睨み上げた。
「君、何か資格とかアピール出来ることあるの?」
相手を試すような意地の悪い口ぶりだった。だが、彼女も負けじと応戦する勢いで答えた。
「バドミントンの県大会の記録なら持ってます。今は足やっちゃってプレー自体は本格的に出来なくなってしまったけど、体力は自信あります」
「君は?」
萌音に返事することなく、先輩は今度は此方へと視線を向けた。
私はその獲物を捕らえるような彼の眼差しに、少したじろいだが、胸を張って強気に答えた。
「絵画コンクールで銀賞頂きました。デッサンは自信あります。それから英検2級持ってます」
私は勢いに任せてそう言い切った。
一方先輩はというと…
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