てるてるBOY

先輩は自己紹介を終えると、また笑い出した。

やっぱりどこか鼻につくのは否めなかったが、天才で変人。

それは間違いなさそうだった。

眉目秀麗。そんな言葉が似合う人は世の中にはかなり少ない。

だが、目の前にいるその人は違った。

柔らかな栗色に輝く髪と、心まで見透かしてしまいそうな丸い大きな瞳。睫毛はビューラー直後のように綺麗にカールしていて、口元には小さなホクロが一つ。

その誉れを受けるに相応しい容姿と頭脳に、私はつい目も心も奪われてしまっていた。

あの奇妙なてるてる坊主と出会った日。

畏怖する気持ちに反して、ワクワクする気持ちが同時に芽生えた。

そして、いまその正体を前に、ワクワクが確信に変わろうとしていた。

「ところで、君達。いきなりやってきて入部希望はともかく、自己紹介していただけないことにはね…名前は？」

尋ねられた私はすかさず答えた。

「佐川史乃です」

「新庄萌音です」

萌音は若干苦笑い気味に口元を歪めていた。

だが、先輩が立ち上がり手を差し出し握手を求めて来たことで、その評価は一転した。

「今日からよろしく」

屈託のない笑顔で、丁寧にぎゅっとそれぞれの手を握る様子には、しっかりと歓迎の意思が感じられた。