てるてるBOY

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「あれ…」 萌音が私の右腕をぎゅっと掴んで、右手で舞台中央を指指した。 あの、てるてる坊主だった。 私達、観客がざわめくのも気にせず、それは舞台中央に設置されたマイクの前に立つと熱弁を振るい始めた。 『新入生諸君、まずはご入学おめでとう。伝統があり進学校でもある春森高校で、本日部活紹介なるものが開催されるに至り、是非、我が部についても新入生の受け入れを開始しようと、今この場で宣言させていただくことにする』 何とも上から目線の祝辞と紹介内容に、誰もがどよめく中、彼はそんなことお構い無しにバサッと持っていた布を広げた。 そこに書かれていたのはこんな文字だった。 『てるてるCO.』 あー、やっぱりか… 私は心の中で入部希望の意思が薄らいでいくのも束の間。 彼は更に続けた。 『我が部の創立は昨年の春、私が転入生としてやって来たことに始まる。部活なのにカンパニー?一体どんなことをしているのか気になる方もいらっしゃるだろうが、入部しないことには詳細は明かせない』 また、随分と上から目線だ。 何アイツ…そんな声がチラホラ聞こえてくる中、相変わらず彼はひるむ様子なく こう続けた。 「だが、我が部こそこの街に今最も必要であり、この街を活気づけるための秘策とも言えるハイパーサイエンス系クラブであることは間違いない。理科が好き。街が好き。何か新しい、楽しいことがしたい!そんなやる気ある生徒の応募心より楽しみにしている。 尚、募集人数には限りがあり本年は3名とさせて頂く。もし入部希望が殺到した場合には、抽選ではなく面接にて選定させていただくため、ご了承の程お願い申し上げる。では』 彼はスピーチを終えると、一礼だけして颯爽と舞台袖に消えた。 司会進行の拍手に続き私たちも促されるように拍手をしたが、会場はさっきまでの熱教とは打って変わり、完全にトーンダウンしていた。 しかし、丁寧なのか、上から目線なのか良く分からない部活紹介ではあったが、ハイパーサイエンスクラブというのは少し興味が持てた。 私は苦笑いまじりに此方に向き直った萌音の顔を見た。
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