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15分後
私たちは高校の最寄り駅で、街の中心地にある『春森駅』に着いた。
駅前は毎朝通るけど、あの日以来、駅前であのてるてる坊主を見たことはなかった。
本当に、あんな怪しい格好で昼間っから何してるんだろうかと思いながら、バスのロータリーに近付くと、改札口の前に人だかりを見つけた。
みんな、携帯片手に空にカメラを翳していた。
「一体、何やってるんだろうね?」
萌音がそう言いながら背伸びをして、様子を伺っていると、その中心部にいるらしき人物がコントローラーを手に人だかりを抜けて来た。
それは、あんなてるてる坊主とは程遠く、背の高い男性だった。髪は栗色で天パ気味。制服のブラウスの上に青いパーカーを羽織っていた。
彼が頭上高くを見上げていると、その場にいた全員がつられて視線を空へと向けた。
頭上からは小型のドローンのような物体が見えていたが、徐々に高度が下がると、それが普通のドローンではないことが分かった。
しかし、目の前の観客達が盛大な拍手を送ると、彼は満足そうに微笑み一連のショーは終わった。
人がまばらに散り始めたところで、私はタイミングを逃してはいけないと駆け足で近寄って彼に声を掛けた。
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