プロローグ

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プロローグ

 どことも知れぬ深い森。  その奥の奥の、さらに奥。  人では決してたどり着けない、森の裏側の最奥に、ひとつポツンと柳の木。  風もないのにゆらゆら揺れて、細い葉っぱが風に舞う。  一つ捕らえて覗いてみれば、なんと不思議な招待状。  ようこそ森の最奥へ  長旅お疲れさまでした  この葉を持って木の裏へ  きつねの宿で待っています  葉っぱを持って木の裏へ。  すると一瞬体が浮いて、気づけば立派な宿の前。古く懐かしい気配と共に、葉っぱの文字は書き変わる。  ようこそおいでくださいました  人の世からのお客様  ここはかくりよ うつしよの裏  私はきつねの管理人  どうぞ中にお入りを  お代は無料 そのかわり  よければ貴方の想い出を  語って教えてくださいな  手前の引戸がかららと開く。  出汁の匂いがふわりと香る。  ここはかくりよ、きつねのお宿。  これはお話、お代の代わり。  誰かが話した人の世の、古くて優しい物語
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