第一話 百々目鬼の話

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第一話 百々目鬼の話

 おーいごめんくださいね……あ、狐。ってことはあなたがここの管理人さん?  やっぱり。いやぁ森を通り抜けようとしたら迷っちまって、途方にくれてたらこれを受け取りましてね。妖怪の宿なんて面白い。満足してもらえる思い出があるかはわかりませんが、よければ泊めてくださいませんかね。  ああよかった。最近目新しいもんもなかったし、つまんなかったんですよ。そんじゃ一泊お世話になりますねっと……ああ、そうそうお代って先払い?  しっかりしてるなぁ。んじゃ語りますか。いやいや構いませんよ、貴重な体験させてもらえるんです、話すくらいわけないですよ。  さて、どんな話がいいでしょうねぇ、人の世の思い出でしょう?あ、お茶?こりゃ丁寧に…あれま、綺麗な椅子もある。んじゃ折角だし座って話しますかね。  あーお茶おいしい……あれ、この目気になります?ああ、確かに他のと色違いますね。 実はこれ人間の目なんですよ。私のお気に入りの、大好きな子の目。綺麗でしょ?  あっそうだ、この目の話をしましょうか。私の覚えている中でも、一等大切な思い出。誰かに話すのは初めてなんで、不手際があっても許してくださいよ。  では話しましょうか。私は妖怪百々目鬼、名は露ノ灯。長い長い時間のなかで、一等輝いてた刹那の話です。
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