1話

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1話

「行ってらっしゃいませ」という組員の言葉を聞きながら敷居を跨いで学校へ向かう 黒髪黒目で片側を緩いオールバックで固めブレザーを着て普通に歩いていても目付きのせいなのか何なのか目をそらし道をあけていく人々、、、 同じ高校に通う生徒も例外なく目をそらし然り気無くフェイドアウトしようとしている その事実に眉間にシワがよる。 それを見た者はヒソヒソと友人に囁く「今日は特に機嫌が悪いぞ」とか「目を合わせると殺されるぞ」など他にもある。半泣きで壁に張り付くヤツも居る そんな俺の名前は木藤 幸久(きとう ゆきひさ)。 普通に高校生活を送ってそれなりに友人を作って放課後に遊んだりして普通に卒業しようと思っていた時期も俺にはありました。 いや、あるんだよ!マジで! 何なんだ!お前らに危害とか加えてないし!加えないし! まぁ、確かにピアスはあいてるし、イヤーカフも着けている、、、右耳に黒いリング形のヤツを。 でも、それだけだろ! ちょっとヤンチャしてる程度だろ! 感情が表に出ないとか言われてるけど、若干、目付きも悪いと自覚もある。 「おい」と声をかけて振り返ったクラスメートに挨拶しようとした俺に対し、木藤 幸久だと認識したクラスメートが謝りながら脱兎の如く目の前から消え去る後ろ姿を何回見送ったことか、、、 終いには「幾らですか?」と半泣きで財布を開こうとしてくるヤツもいた。思わず「は?」と言って眉間にシワがよったな。「金なんか要らねえよ」と言って溜め息をつきつつ、あまりにも可哀想な半泣きの顔を見ていられず、目をそらしながら改めて「おはよう」と言おうとしたら号泣しながら走り去った。なんていうのもあった。 友だち欲しいんだよ!マジで! 切実に!放課後遊びたいよ!お友だちと! クソジジイ(親父)には高校生活は自由に過ごしても構わないという許可をもぎ取り嬉々として高校生活に思いを馳せた俺の心を砕くには十分すぎる今の現状に涙すら出ない、、、 *
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