ミチのおてがみ

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 木々の間をすり抜ける陽の光に照らされた木の葉の道を、ザクザクと音を鳴らしながら進む足。大きい足が四本に、小さい足が二本。 「ねー、まだ着かんのー?」 「もうちょっと。この道の先や」  右手に持った木の枝を上下左右にぶんぶんと振り回しながら歩く女の子の名前は、ミチ。頭の高い位置で小さく赤いリボンで結ばれたツインテールがチャームポイントだ。  ミチは今日、生まれ育った都会を初めて離れ、田舎町へと引っ越してきた。だが都会暮らしで幼稚園も小学校もスーパーも徒歩圏内にあったために車のない生活をしていたミチの両親は、父親の突然の転勤で車が必須となる田舎への引っ越しが決まり、頭を抱えた。  小高い丘の上にある新しい家までは新幹線とバスを乗り継ぎ、ようやく着くのだが、今後はどこへ行くにも車がないといけないのでそのたびにレンタカーを借りるわけにもいかず、引っ越し費用や諸々の費用プラス、自家用車を購入する費用も必要となる。  とりあえずしばらくは会社や小学校などには自転車でしか行けず、引っ越しの荷物も業者に全て持っていってもらい、ミチ達は最低限の荷物片手に公共交通機関を使ってここまで来た。駅を出てから既に一時間以上は経っている。小学校二年生のミチにはひどく長く感じる距離だ。
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