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最初は、仕事帰りの駅の階段でだった。
ホームへ降りる階段の途中で、すれ違いざまにふっと手を握られた。
それは、たまたま手があたったというレベルではなく、明らかに私の手を握った確信犯に思えた。
「……えっ?」
驚いて自分とは行き違いに階段を上がる人を振り返ると、上がり切った階段の先にスーツの後ろ姿が目に入った。
「あれって……」
一瞬、見覚えがあるようにも感じて、だけどすぐに見えなくなってしまったその人を、誰なのか咄嗟に確認することまではできなかった。
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