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「有名なの?」と、聞き返す。
「……かっこいいですからね、あの人は。部内じゃイケシゲなんて、呼ばれてますし」
喋りながら西嶋君が作業を止めて、デスクに置かれたカップコーヒーを啜る。
「……イケシゲ?」
「イケメンの重成。あだ名が付くほどの有名人ですし、あの人は」
「……イケシゲ…そうなんだ……」
ぼんやりと頷いて、そんな人がどうして私なんかに……と、ますますわけがわからなくなる。
「……そうですよ。もしかして、斉木さんもあのイケメンのことが、好きになっちゃったとか?」
上目に表情を探られて、
「……そうじゃないけど……」
ボソボソと口にすると、西嶋君は軽く笑って、
「まぁ、好きになるのはかまわないですが、あの人は、ライバルも多いですよ?」
話して、またキーボードに目を落とした。
「……そう」
釈然としないまま返して、そんなにもてるのなら、私になんてかまわなくてもいいのにと、
彼がもてることを妬くような思いがふと湧き上がってきて、そんなことを考えたって無意味なのにと感じた……。
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