1

2/13
前へ
/29ページ
次へ
……階段で手を握ってくるなんて、どういうつもりなんだろう。 握られた手に自分で触れてみるけれどなぜだか嫌な感覚はなくて、じわりと手の温もりが伝わってくるようだった。 そんな風にも思えるのは、(てのひら)にやさしく包み込むようにも握られて、悪意などの類いが何も感じられなかったからかもしれない……。 「だけど……誰だったんだろう? あの人」 自分の手をぼんやりとさすりながら、帰宅のための電車に乗り込んだ──。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

900人が本棚に入れています
本棚に追加