ホケン

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ホケン

私には、スワロさんの他にも相談に乗ってくれる人がいる。 トラネスという名前の人だ。 トラネスさんに言われてしまった。 「え、浮気する上に二股なの? それだと、りさらさんがふったとしても、相手にはもう一人いるから何も思わないよ。 …相手がそんなのでいいの?」 言葉が深く突き刺さった。 否定したかった。 だけど…きっとそうなのだろう。 私が居なくなっても、他の娘がいる。 そう思うと、胸が苦しくなった。 「次にいこうよ!絶対大丈夫さ。」 トラネスさんはそう言ってくれた。 私は…まだサカキさんが好きで、進むことができなかった。 ずるずると、関係を続けていった。 サカキさんの本名は、信行(のぶゆき)さんというらしい。 ずっと聞くタイミングを逃していたので、やっとわかったという感じである。 「このままでいいのかな…?」 このまま一緒にいて、幸せなのだろうか。 私は枕を抱き締めた。 「違う人探した方がいいのかな…?」 枕に顔を埋めた。 答えがでない。 …というより、信行さんから離れることができない自分がいた。 「もう…! 好きじゃないなら思わせ振りな態度とらないでよ…! ちゃんと突き放してよ!」 枕を壁に投げつける。 壁にぶつかった枕は、力なく床に落ちた。 私は、こぼれ落ちる涙を一晩中拭った。
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