失恋紙飛行機

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 すると、女の看護師が割って入る。彼女は男性看護師から紙を取り、溜め息を吐いた。 「また、余計な仕事を増やして……」  彼女は男性看護師に申し訳なさそうに会釈をして大股で歩き出す。すずめはすぐさま、彼女の後を追った。 「ちょっと、ノゴマくん!!」  三階のある病室の大部屋に着くと、彼女は大声を上げた。  すると、一番近くにいたお婆さんが人差し指を口に当ててしーっと注意される。  彼女は顔を赤くして「すみません」と頭を下げて、窓際の、スズメと同い年くらいの男の子がケラケラと指差して笑っていた。 「ツバメさん、病院で大声出すのはダメだよ」  ツバメは平常心と心の中で何度も唱えながら大股で力強くノゴマのベッドに行き、机の上にスズメが届けた紙を置く。 「ノゴマくんも窓からゴミを投げるのもダメなんじゃないのかな?」 「ゴミじゃなくて紙飛行機だし。それに、仕方ないだろ。病院の外に行っちゃうから。ほら、ある意味治外法権だよ」  ツバメはノゴマが苦手だ。色々と接し方が難しいのもあるが、一番苦手な部分はその減らない口だ。 「治外法権って。病院外も日本よ。変な屁理屈捏ねないで」 「それよりさ、後ろの奴誰? 新しい患者? 俺、退院?」  ツバメは苛立ちを抑えつつ諭すように言おうと心掛けたが、それはあっさりと無視される。 「後ろの奴ってまた話を逸らして……」  ツバメは振り返ると、二人のやり取りをぼけっと見てるスズメがいた。驚いて咄嗟に声が出ようとしたが、口を抑える。 「えっと、だれ――いや、どなた様ですか? お見舞いなら受付を」  ツバメにそう問われて、スズメは「えっ?」と返す。ここでスズメは自分が今、病室内で一番視線を集めていることに気付いた。
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