失恋紙飛行機

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「えっと、それ、私が拾いました。頭に刺さって痛かったです」  スズメは混乱する頭で自分の素性を明かした。  スズメはノゴマのベッドの近くにある椅子に座っている。チラチラと廊下の方を見ていた。 「まだ帰らないのか」  不機嫌そうにそう聞くノゴマにスズメは廊下を見ながら「ちょっと、個人的な用事で」と返す。  一応、ノゴマはツバメの目の前でスズメに頭を下げた。  それでスズメは許したのだが、代わりに条件を付けてきた。しばらくこの病室にいたい、と。 「誰か探してるのか?」 「――その、ノゴマくんはどうして紙飛行機を飛ばしていたの?」  ノゴマの質問に対して、スズメは誤魔化すためだけに質問を返す。 「早期退院する方法をテキトーにググっていたら、紙飛行機ギネス記録保持者の話が出てきたんだよ」  彼は嫌々ながらも質問に答えた。 「その人さ、骨折で入院したときに毎日紙飛行機を飛ばしていたんだ。看護師からの紙飛行機なんてって扱いに発奮して紙飛行機の研究や練習をしまくったら、ついに病院の敷地外に飛ぶようになったんだって。すると、近所から苦情が来て、病院から迷惑な患者として早期退院できたんだそうだ」  妙に饒舌に瞳を輝かせながら話を続ける。 「俺も敷地外まで飛ばすにはそれこそ血が滲むような努力が」 「ノゴマにお客さんなんて珍しいね」  そんなノゴマの話を誰かが遮ったが、彼は特に不愉快になる様子はなく「あっ、ミサゴ」と名前を呼んだ。  スズメはミサゴと呼ばれた人を見る。右腕にギプスを巻いた男子高校生がいた。スズメの顔は真っ赤になる。 「あっ、あの、えっと、お邪魔してます」  ミサゴは真っ赤になったスズメとノゴマを交互に見た。 「いや、お邪魔なのは僕の方か」  彼は笑顔で手を振り、出入口側にある自分のベッドに戻る。スズメは何も言えずに手を振り返すことしか出来なかった。  ノゴマはそんなスズメのあからさまな反応を面白がった。 「へえ、探してたのってミサゴだったんだ」  意地悪く聞こえるノゴマの言葉に、ずっとミサゴの方を見ていたスズメの顔が強張る。  スズメはノゴマの方を見ると、ニヤニヤと笑っていた。
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