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選ばれたわたしたちにひとつずつ与えられたその白い紙きれは、地球上のどんなものにも変えがたいほど価値のあるものだと教え込まれていたので、どうして彼女がそんなひどいことをするか、意味がわからない。
わたしの中の思いは恥ずかしさから一気に怒りへと変化する。
わたしは、通り過ぎた彼女の背中に向かっておそるおそる言葉を投げかけた。
ねえ、なんであなたは、そんなに大切なものをくしゃくしゃにしてしまったの、と。
すると、その女の子は、なみだをぬぐいながらこうわたしに訴えかける。
もうね、読めないの。この“感動的な手紙”。
わたしは、なるほど、彼女は手紙を読むときに感情移入しすぎちゃって、震えるほどなみだを流して、大切なはずの“感動的な手紙”を握りしめてしまったんだ、と思ったんだ。
けれども、すぐにわたしの予想は大きく外れてしまった、ということを知ることとなる。
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