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とある舞台会場(ぶたいかいじょう)で
わたしは、そのとき会場にいた、わたしとおない年くらいの女の子が、泣きじゃくりながらわめいているのを、目の当たりにした。
少女はちらと、こちらのほうをふり向いたけど、わたしは思わず、その子から視線をそらしてしまったんだ。
わたしには、いくつか選択できるだけの余地があった。その子になにか声をかけ、同情してあげるか、かける言葉が見つからなくても、無言でただうなずくくらいのことはできただろう。
それでもわたしは、その少女の叫び声に対して耳をふさぎ、見て見ぬふりをしてしまった。わたしは急に恥ずかしさを覚え、彼女から逃げるように舞台そでに隠れたんだ。
その子はわたしの気配に気づいたのだろうか。それともまったく気づいていないのだろうか。とにかく、その子は下を向きながらこちらの方へとぼとぼと歩いてくる。
少女とすれ違ったわたしは、その子が、大切なはずの白い紙きれを、ぎゅっとにぎりつぶしてしまったのに気づいた。
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