同志

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 斯かる事情を承知の上で比呂志は、件の通り言葉に詰まった後、心中で、「亦、しらばくれやがって。こいつもモラルが崩壊しているんだ。河田と一緒で嘲笑った行為が法律で罰せられる訳ではないし、仮令、僕が河田の嘲笑った行為をどう糾弾しようとしたって、どうにでも誤魔化せる訳だから僕の様な底辺の失敗者なんか嘲笑って楽しめば良いんだ!という背徳的な考え方をする罪深い族の一人なんだ。そして今、僕が其の罪に触れたんで、こいつはしらを切っている訳だ。嗚呼、全くこいつに何を訴えても通じる筈がないか・・・」と今更ながら俗人に失望し、馬鹿馬鹿しいとは思いつつ、「嘲笑は人を馬鹿にして笑う事で人に辱めを与え人の誇りを傷つける事になりますので笑いとは違って悪い事です」と殊更に丁寧に噛み砕いて説明した。が、矢張り工場長は真摯に向き合わず、それどころか嘲笑を浮かべながらこう言った。
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