空っぽの手紙

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桜の花びらが青葉に変わろうとする頃、見知らぬ者同士しかいなかったクラスメイトたちも各々の繋がりを見つけては、新しく始まった学生生活を謳歌していた。 僕はもちろんそんな輪に加わることもなく、まるでどこか違う世界を眺めるような気持ちで窓際の席から見つめていた。 まだ慣れない学ランの首元を触り、中学の時と同じようにブレザーなら良かったのに、と一つため息をつきながら。 クラスでの自分の立ち位置は、たぶん独りぼっちか、寂しいやつ。 別にイジメられているわけでもないし、無視されているわけでもない。 むしろ、気の良い奴が多いのか、僕のことを気にかけて話しかけてくれるクラスメイトも多い。 それでも僕が頑なに輪に加わらないようにするのは、誰とも繋がることが面倒だったからだ。 いや、もしかしたらもうこれ以上、この世界と繋がることが嫌なのかもしれない。 ふと窓の外を見上げると、空に、小さな鳥が一匹飛んでいた。 茶色なのか黒なのかわからない翼を広げて、あらん限りの力で自らの命を羽ばたかせている。 あの小さな鳥から見れば、僕の方がよっぽど小さく映っているのだろう。
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