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冬の稲妻③
「うわー光の壁にぶつかりそうだ。」
中野がヘリの操縦桿を握り締める。
「中野君、一旦停止を頼む。」
折口が声をかける。
その瞬間上願が乗り出した。
「中野、正面A2ー3地点へ突っ込め!」
「上願さん、そりゃー無謀です。ヘリが壁に打ち当たりますよ。」
中野が叫ぶ
「上願さん、中野君のいう通りよ。無茶はやめて。」
夕子も叫ぶ。
「代われ!おれがやる。」
上願はすぐさま中野を強引に助手席に座らせ、操縦桿を握った。
「いいか。みんなしっかり捕まってろ!」
上願は地点へめがけてヘリを動かした。
壁の中心部へ真っしぐらだ。
中野も折口も声を上げる。
「ぶつかる!」
しかしその瞬間、光の壁は消えた。
雲が著しくかかっていたが、光の壁は消えていた。
「どういうこと?」
夕子は光の壁が消えたことに驚いた。
「お嬢さん、あれは自然のものでない。人が作り出したもんだ。」
「なんですって?」
夕子が上願に問い返す。
「折口の坊主に聞いてみな?」
折口はパソコンのキーを打ちながら答えた。
「すいません、僕のミスです。着地地点のところデーター漏れをしてました。」
夕子が問い返した。
「上願さんは折口君のミスをわかってたの?」
上願は煙草をくわえて、ぶっきらぼうに答えた。
「折口の指が震えていたのさ。」
「ええっ、?」
「それよりか、前を見ろ。」
上願は話をそらせた。
夕子は思わず声を上げた。
「中央シティー?これどういうこと?」
前面には10年前と同じ光景が広がっていた。
「まあ10年もあれば、都市は元通りに復旧出来るだろうな。」
上願は煙草を吹かせた。
「でもそれなら、なぜ海西シティーや天王シティーに連絡取らないの?大災厄で助かった人もいるのだし。」
「お嬢さん、まだ前の状態と同じだと確認できたわけじゃない。今我々はこの地に潜入したばかりだ。」
中野が横から乗り出す。
「ヘリの着地点を見つけました。真木村上官、上陸しますか?」
「上陸を了解したわ。これからが本当の潜入よ。どんな危険が待ち構えてるかもしれない。」
夕子は全員に伝えながらも、自分に言い聞かせてるのだと思った。
第2部 潜入篇 完
」
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