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冬の始まり③
10年前夏‥
海岸ロードを疾走していた夕子と絵里の電子バイク、そして士郎はトンネル内から発するグラフィックセンサーの映し出す映像に気づいた。
どうもトンネル内に組み込まれた非常ロードへ誘導してるようだ。
士郎、絵里を載せた夕子は案内されるまま、非常ロードに進む。
夕子は疑問に思ったが、トンネル内にはめ込まれた新たな映像に気づいた。
そこにはあの邪悪な男の顔が浮かび上がる。
「われは地球革命の指導者ジャックスミス。台場涼は我々が捕獲した。ははは‥」
「涼を返して。わたしたちが何をしたというの?」
夕子が叫ぶ。涼と引き離されたときに声が出せるようになっていた。
「そうよ‥狂ってる。」絵里も叫ぶ。
「 行くぞ。非常用道路を突きっきる。こいつにかまってるひまはない。」
士郎が号令をかける。
「ふふふ‥お前たちは地球が始末する。ビッグウォールの名の元に‥わははは。」
不気味な笑いとともに映像は消える。
その瞬間、強烈な地震が襲った。
トンネルの出口までなんとか間に合った。
どうやら海西シティー方面に抜けるロードに出たようだ。
夕子にははっきりみえた。
光の柱が空に伸び、それが合わさって壁になっていくのを‥
光の柱から光の壁に。
‥あのジャックスミスが言っていたビッグウォールとはこのこと?‥涼、無事でいて。‥
「夕子、大丈夫?」
絵里の声が聞こえる。
「ごめん、神明島を脱出するあの時の光景がふいに浮かんだの。その後の記憶がなくて‥」
夕子は絵里の声で意識が元に戻っていた。
「そういえば、わたしもあの後の記憶がしっかりしないの。気がついたらわたしも夕子も士郎も海西シティーのセントラル病院に運ばれていたのよ。」
「そうだったの。きっとあの光の壁を見たとき記憶を失ったのに違いないわ。」
「その光の壁、つまり大災厄をもたらしたビッグウォールについてこのジャックスミスていう男は何か関係してるのに違いないわ。」
夕子もそれは感じていた。
「絵里、ビッグウォールは地震、嵐、落雷、豪雨、そして光の壁が何かも覆い尽くしたのね?」
「大災厄ビッグウォール‥わからないことだらけなの‥この研究所でも全力を上げて調査してるわ。中央シティーにあった時空光学研究所の資料もインプットしてある‥もう少し待って。何か理論づけるものがきっとあるから。」
「わかったわ。また連絡とるね。」
夕子と絵里は生涯の友であることを改めて確信した。
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