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私はパパと一緒に飛行機に乗っていた。
東京に帰るのをグズっていた私は、パパも一緒に帰ると言ってくれたので安心してパパの隣に座っていた。パパと離れない様にずっと手を繋いでた。パパの手はとても大きくて温かい。
飛行機会社のお姉ちゃんが私に尋ねた。
「何か飲む? オレンジジュース、アップルジュース、コーラ、どれが良いかな?」
「アップルジュース!」
「それじゃ、はい。気を付けてね」
私は渡された紙コップを受け取ってゆっくりと口に運んだ。
「美味しい!」
「そう良かったわ。あとでオモチャも持って来るね」
そう言ってお姉ちゃんが次の席へ移動しようとしてた時にそれは起きた。
突然、耳を切り裂く“どーん!”と言う音がしたかと思うと、機内を突風が吹き抜けた。耳がツーンとした。
頭上から酸素マスクが降りて来る。
さっきジュースをくれてお姉ちゃんが、急いでカートを押して前の方に戻って行く。スピーカーから放送が聴こえる。
『エマージェンシーデセント エマージェンシーデセント』
『マスクを強く引いて、鼻と口を覆って』
『タバコを消して ベルトを締めて」
『ただいま緊急降下中』
パパが自分のマスクを着けて、私にも着けてくれた。
「現在、機内の与圧が維持出来なくなっています。至急酸素マスクを装着して下さい。お子様がご一緒のお客様は、ご自分がマスクを装着した後、お子様にマスクを付けてあげて下さい。現在、緊急降下中です。シートベルトを再確認下さい。次のご案内があるまで、酸素マスクはそのままでお願いします。これから客室乗務員が廻りますので、援助が必要なお客様は客室乗務員にお声がけ下さい」
さっきのお姉ちゃんの声が聞こえた。
飛行機は左右や上下にフラつきながら飛んでいたが、突然、真っ逆さまに落ち始めた。窓の外の緑色の山が近づいて来る。パパが私の身体に覆い被さって来た。
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