1.大嫌いなお父さん

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大翔(ひろと)、待っていたわ。入って」 私は玄関で彼を迎えるとダイニングへ案内した。 大翔(ひろと)の顔を見て、母が嬉しそうに微笑む。 彼もテーブルの上に広げられた夕食を見て声を上げた。 「凄いな! 美味しそうだ。ありがとうございます!」 大翔(ひろと)は嬉しそうにテーブルに腰を降ろした。直ぐに母が彼にビールを注いだ。 いつも私達は二人きりで夕食を食べるから、夕食に大翔(ひろと)が加わるだけでも、とても賑やかに感じる。特にビールを呑んでご機嫌になった大翔(ひろと)はいつも楽しそうに私や母と話すから、その賑やかさが一層際立っていた。 夕食後、大翔(ひろと)は私の部屋を訪れた。 少し話していると彼は本棚から古いアルバムを見つけた。 「これ見てもいい?」 彼はそう言いながら、もうアルバムを本棚から取り出している。 「ダメって言ったて見るんでしょ? いいわよ。でも私の小さい頃の写真は少ないわよ。父の顔が写っていたのは全て捨てたから」 「そうなんだ。へえー、可愛いじゃん。お母さんも凄く若い」 彼が見ていたのは、母に抱かれた生まれて数ヶ月の私だった。 「あっー、裸だ。これは他の奴に見せたくないな」 それは私が三歳くらいの時のお風呂に入っている写真だった。 「ちょっと見ないでよ!」 私は慌てて写真を手で隠そうとした。 「この後ろに居るのが、お父さん?」 お風呂に入っている私は、男の人の両手に抱かれていた。その人の顔はフレームの外に切れていたので、肩より下しか写っていなかったが、ガッシリとした逞しい身体だ。
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